いつものように郵便受けに手を突っ込み、配達物
を取り出す。
ベネッセコーポレーションからの封書がある。
何か取引とかあったかな?
封筒の中央には太い赤字で「ベネッセコーポレー
ションより重要なお知らせです」とある。
これは、只事ではなさそうだな。
私は封書開いた。
「お客様情報漏えいに関するお詫びとご報告
このたび、ベネッセコーポレーションのお客様情報
漏えいにおいて、お客様ご自身の情報も含まれてい
ることが判明しましたので、本書状を送付させていた
だきました。
へぇ~、そうなのか。
覚えがないなぁ。
私は弱い記憶力をフル回転させる。
それでもベネッセと何かあったのか、ひとつも思い
出せない。
私は案内用の電話番号に電話をかけた。
私はベネッセさんとは、特に取引があった記憶が
ないのですが?
「実はそう仰るお客様も多いのですが、その封書が
届いたということは過去に何らかのお取引があったと
いうことなのです」
そうなんですか。
全然思い出せないな。
まぁ、どちらにせよ私は少しも怒っていませんから。
私がそう言うと、受け付けの女性は少し驚いたよう
だった。
別に今回洩れた程度の私の個人情報など大した
ことはない。
氏名、生年月日、住所、電話番号である。
この程度のことは洩れたってかまわない。
それにとっくの昔にどこかの業者には洩れているだ
ろう。
インターネットのログインIDやパスワードだと話は別
だが、今回はアナログ情報でしかない。
それでも「個人情報漏えい」ということで全社をあげ
てお詫びしなければならない。
ネット時代は便利ではあるが一面大変でもある。
私は受け付けの女性にねぎらいの言葉をかけて電
話を置いた。