もう一本の物干し竿は、今は使われていない。
自転車置き場の屋根の下に横に掛けられている。
いつでも使える状態にある。
だが、独り暮らしでは物干し竿は何本もいらない。
その物干し竿は、わが家に来てからもう何十年にも
なる。
アルミなどの金属製ではない。
竹の物干し竿である。
私が子供の頃からわが家にあった。
わが家の家財道具の中でも最古参の部類に入るだ
ろう。
これにもカバーがかけられている。
薄い水色のカバーである。
たしかこのカバーは行商に来た人から買ったものだ
ったはずだ。
物干し竿カバーが世に出始めの頃のものだったと聞
いている。
私は子供で母が物干し竿にカバーをかぶせて熱湯を
かけているのを横で見ていた記憶がある。
ぶかぶかだったカバーが熱湯により瞬時に縮んで密
着する様子がとても面白かった。
この物干し竿が家族の洗濯物を毎日背負って干し乾
かしてきたのだ。
使ってはいないが、まだ使える品ということで新しい
カバーを付けることにした。
そのためのカバーも用意してある。
一応準備だけはしてあるのだ。
ただ、取りかかりが遅いのである。
~続く~