朝、雨戸を開けた。
外を眺める。
早朝なので家の前の道も静かである。
そこへおばあさんが歩いてきた。
70代後半以上のお歳に見える。
歩行器を押している。
かなり背中が曲がっている。
ヨチヨチと歩行器に重心を預けて歩いていく。
普通の人の半分かそれ以下の歩行速度である。
足をずるように歩いている
でも何かちょっとおかしいな。
歩いているのが道の真ん中だ。
いくら朝早いとはいえ、道のど真ん中を行くのは危な
いな。
そこへクルマが走ってきた。
おばあさんの後方からである。
黒のコンパクトカーである。
道の真ん中にいては、まずいだろう。
だが、おばあさんは端に避けようともせず、そのまま
歩いている。
クルマは大幅に減速し徐行となった。
どうするのか?
クルマは道幅ギリギリまで寄せおばあさんを避け、
ゆっくりと追い越して行った。
コンパクトカーでなかったら、避けきれなかっただろう。
こういう時は、どうしたら良いのだろうか。
堂々と道の真ん中を歩いているのである。
道に出て行って「おばあさん、あぶないですよ」と声
をかけるべきだっただろうか。
あるいは、このおばあさんは認知症などで状況が把
握できていないのかもしれない。
だったら尚更声をかけるべきだったのだろうか。
だが、私は起きたばかりで外へ駆け出すのも憚られ
るような格好だった。
おばあさんは、何もなかったかのようにそのまま歩き続けた。
これからどこかへ行くのか。
それとも、帰るのか。
次に見かけたら声をかけたいと思う。