読経が終わった。
坊さんは参列者の方に向いて座り直した。
そして話し始めた。
「故人はお念仏に熱心な方でした。先日もお会い
した時には大きな声でお念仏をされておられました。」
坊さんと亡くなったTEさんの旦那さんは日頃か
ら懇意にされていたようだ。
法事でなくとも会うことがあったようだ。
TEさんは普段から篤い念仏信仰の人だったのか。
これは知らなかった。
ご近所でも個々の信仰生活まではよく知らない。
殆ど知らないお宅が多い。
ただ、おかしな宗教、特殊な宗教に夢中になっ
ているという情報は早々に知れ渡る。
お付き合いに用心しなければならないからだ。
だが、そうでなければ故人の信仰生活が外に知
られることは無い。
信仰はプライベートなものであり、声高に語るもの
ではない。
自宅でお通夜を行う、ということもTEさんの信仰
生活から来る流儀なのだろう。
「この後は故人の思い出を語って偲ばれては如何
でしょうか」
お通夜は、これで閉会だった。
残ってお話をする方もおられるようだ。
私はこれでお暇することにした。
玄関の土間にぎっしり置かれている靴の中から
自分の靴を見つけ出した。
外に出るとさすがに寒い。
1月下旬の夜である。
5℃以下になっていることは間違いない。
その中で町内会の同じ班の方々は受け付けをさ
れていた。
ご苦労なことである。
私は、挨拶をして家に向かって歩きだした。