”刑事コロンボ”は、原作者コンビである脚本家の
リンク&レヴィンソンとピーター・フォークとの諍いの
中から生まれ育まれていった。
原作者コンビは、何とか自分たちのオリジナリティ
を表そうとし、それをフォークに要求する。
フォークは、自分が気に入らない部分に対し抗議
し変更を求める。
リンクによれば両者は「論争の日々だった」そうだ。
殆どの俳優は与えられた脚本に口出しすることは
せず、脚本に忠実に演じようとする。
それが、マナーであり、業界で生きていく常識であ
る。
フォークはそんなことはお構いなしに文句をつける。
それが影響してか、原作者コンビは、2作目の”死
者の身代金”では、脚本から降りてしまう。
続く3作目の”構想の死角”も脚本を書いていない。
2作目と3作目は、当時気鋭の脚本家に任せてしま
っている。
そして、4作目の”指輪の爪あと”で脚本に復帰した。
だが、この作品がリンク&レヴィンソンが”刑事コロ
ンボ”の脚本を手がけた最後の作品となる。
つまり、リンク&レヴィンソンが書いた脚本は第一作
目の”殺人処方箋”と”指輪の爪あと”の2作品だけと
いうことである。
たった、2作品でも原作者は原作者である。
しかし、リンク&レヴィンソンは”刑事コロンボ”から手
を引いてしまったわけではなかった。
その後も番組冒頭には「原案・リンク&レヴィンソン」
と必ずクレジットもされている。
自らは脚本を書かずともプロデューサー的ポジション
を確保し、番組の制作に関わり続けたのだ。
このあたりは実に抜け目がない。
コンビは原作者として、”刑事コロンボ”に大きな影響
力を振るった。
脚本をチェックし、作品の質を保ち設定の不備を見逃
さなかった。
何より重要なのは、常に脚本に文句をつけてくるフォ
ークとやり合わなければならないことである。
静かな雰囲気で展開していく”刑事コロンボ”は、その
舞台裏では常に火花が散っていたのである。
~続く~