不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

公衆電話で話すご老人

 いつも前を通るお米屋さんの店先の公衆電話で、
70代後半くらいのおばあさんが、何か話をしている。
 
 最近では、公衆電話を利用している人を見かけるこ
とは、本当に少なくなった。
 携帯電話は公衆電話を街から追い出しているようだ。
 
 そのおばあさんの話の内容は、単なる連絡といった
簡単な用事ではなさそうだ。
 帽子をかぶった小柄なそのおばあさんは、電話機に
しがみつくようにして話している。
 深刻な内容らしい。
 だが、その深刻な内容の電話を、通りの店先の公衆
電話でしなければならない、ということは何か別に事
情がありそうだ。
 ご自分の家に固定電話がない、ということは、あり
えないことではないが、ちょっと考えられない。
 ご老人で、携帯電話を持っておられないのかもしれ
ない。
 何にしろ、自分の家の電話では、かけられないのだ
ろう。
 同居している家族に聞かれては困る内容なのか?
 おばあさんとはいえ、プライバシーもあるし、人に
聞かれたくない話もあるだろう。24時間、誰かが家
にいると、気兼ねして自由に電話を使えないのかもし
れない。
 それでも、わざわざ外出して、電話をかけるという
ことは少し寂しい気がする。

 それでも、そうして訴えかけることが出来る相手が
いるということは、幸せなことではある。
 電話で話せば、行き詰っていた思考や行動に打開点
が見つかるかもしれない。気分も変わるかもしれない。

 あのお歳になっても、やはり悩みか相談ごとがある
のか、と改めて感じた。そんなの当たり前だ、と言わ
れそうだが、ご老人の心のうちは私にはまだ、よく分
からないのだ。
 お年寄りにはお年寄りの事情と言うものがあるのか。

 私は、電話に一生懸命なそのおばあさんの横を、ゆ
っくりと通り過ぎていった。