不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

桜と猿回し

 当地の桜の名所に行ってみた。
 ここは、以前もこのブログに書いた場所で、本当に地元の人しか
来ない所である。それでもいわゆる屋台が何台も出ている。
 来ている人も、非日常性を味わおうと思って来ているのではない
ので、屋台の売り上げも、もうひとつのようだ。他のもっと人の集
まる行楽地に行けば良いのに、と思ったりするが、堅気の人間には
わからない事情と言うものが存在しているのであろう。

 そんな中で、珍しく人だかりの出来ている場所がある。
 そこでは、猿回しのショーが行われていた。
 早いビートのBGMをバックに、猿が芸をしている。
 はしごに上ったり、台から台へと飛び移ったり。良く見れば、大
したことはしてはいないのだが、ニホンザルが人間の命令に従って
動作をする、という点は、観ている人を魅了してしまう。
 この猿回しは、師匠の男性とアシスタントの女性、そして弟子の
猿のトリオ編成である。

 私は、猿の芸よりも、この男性と女性はどういう関係なのだろう
か?一日、いくら位の売り上げがあるのだろうか?えさ代は月にい
くらかかっているのだろうか?といったことが、つい気になってし
まう。
 どこに住んでいるのだろう?旅回りとすれば、どの程度の宿に泊
まっているのだろうか?やはり、ビジネスホテルなのか?横付けし
ているバンに泊まることもあるのだろうか?
 と、どうでも良い、大きなお世話なことが気になってしまう。

 そういえば、この猿回し一座は、市内の有名仏閣内でもショーを
していたのを観たことがある。
 その時も、今回と同様で、人だかりは大きな歓声に包まれていた。

 ショーが終わった。
 師匠の男性が、口上を述べた。 
 そして、観客に見物料をこの箱に入れてくれるように、とのお願
いがあった。
 タダではないのである。だが、強制でもない。
 見物客は、それが分かると、さっと一斉にその場を離れていった。
 それでも、2~3人が、硬貨を投げ入れている。
 
 観客の殆どは、有料と分かると、私観てません、といった顔で、
どこかへ行ってしまった。
 この観客の反応は、仏閣の時と同じである。
 師匠と女性は、特に表情を変えるでもなく、片づけを始めた。
 こちらも、仏閣の時と同じだった。
 
 あの一座は、今夜は宿に泊まれるのだろうか?
 あのピカピカのバンに泊まったのであろうか?
 あんな車が買えるのだから、案外儲かっているのか?
 私は、大きなお世話なことを考えながら、桜並木の下を自転車
でゆっくりと走って、県道に出た。