私は玄関前に敷かれたござで靴を脱ぎ家の中に入っ
た。
中は人で埋まっていた。
どこへ座れば良いのかな?
こういうことは少し迷う。
おっと、その前にトイレに行っておこう。
一度座ったら立ち上がるのも難しくなりそうだ。
用を済ませた後、戻ろうとすると当主がニコニコしなが
らやって来た。
おぉ、この人も愛想が良さそうな人だな。
当主は私に用事があるようだ。
そして私にこう切り出した。
「ペンネーム○○さんへ□□さんから、ことづかっていま
す」
そう言って品物を渡そうとする。
えぇ!?
いきなり何だ?
○○とは私がネット上で主に使っているニックネームで
ある。
そのニックネームの主が私であることを、どうして当主
が知っているのだ?
それに□□さんとは誰だ?
私は戸惑った。
だが、すぐに事情を察した。
先日、私はこの地にお住まいの方のブログに簡単な相
談を持ちかけ、その方からアドバイスを頂いたのだ。
□□さんはその方でなのである。
□□さんは、お盆にこの親戚の家を訪れるであろう私の
ために、その品を用意し当主に託してくださったのである。
その品は□□さんの手作りによる木工製品だった。
うわぁ~、何という心遣いだろう。
また、ネット上のおつきあいの方から立体空間でのコン
タクトを頂けるのは、とても新鮮な感じがする。
いつもテレビで見ていた有名人と会うような嬉しい感覚
である。
当主の話によると、その方はネットの他にもメカニックに
詳しいことでご近所にも知られている存在のようだ。
ちなみに当主の家ではネットなどの電脳空間における
利用は家の方針として一切行っていない。
そのおかげか、私がブログをいつも記しているなどとい
うことを尋ねられなくて済んだ。
後になって気がついたのだが、当主に□□さんの住所
を教えてもらい、お宅に挨拶に伺っても良かったかな、と
思った。
しかし、その時はそういうことを思いつく余裕はまるでな
かった。
多くの親戚がいる中でどういう風にしていたら良いのか、
そればかり考えていたからである。
~続く~