不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

お祭の準備と役を務めてきた。その④

 お祭の装飾の手順などはマニュアルに記録さ
れているので、それに沿って作業を進めていく
ことになる。だが、細かい備品が何処に保管し
てあるのか、等といったことまでは記されてい
ない。
 山車の上の雪洞の電灯を落下しないように縛
りつけておく針金や、太鼓を固定する紐が何処
にしまってあるのかまでは、わからないのであ
る。
「え~っと、ここどうします?」と山車の上か
ら声がかかる。
 すると、世話役の人が「ちょっと待ってて」
と言うと自転車に飛び乗り走り出す。
 この間、作業は中断する。
 中断する、とか書くと何か息を詰めて行って
いるように思われるかもしれないが、実際のテ
ンポは特に急いだ速さではない。
 強い風が吹くと、神社の桜の木が揺れ花びら
が舞い散る。
 私たちの頭上にも桜の花びらがひらひらと回
転しながら落ちて来た。
「お~桜吹雪」と声が上がる。
 そして、そこにウグイスの声がした。
「ホーホケキョ」
 ちょっと出来すぎのようだが、自然のタイミ
ングは時に洒落たことをしてくれる。
 春としては暖かい土曜日の午前中、晴天の青
空の下に満開の桜とウグイスの声である。
 実に穏やかなひと時である。

 少しすると世話役が戻って来た。
 針金を山車に放り投げる。
 山車の乗組員は見事にキャッチする。
 
 神社の社務所からひっぱて来た電源コードを
山車に接続する。これで電球が点灯すれば、一
応の準備は終了である。
 山車を囲むようにぶら下がっている電球が点い
た。
「それでは、詰め所に戻って昼食です」
 お~、これでひと段落か。
 私達お祭準備の一行は、ぞろぞろと詰め所に戻
って行った。
 
 ~明日に続く~