1965年、ピーター・フォークは、もう一本のテレビド
ラマに出演する。
"The Trials of O'Brien オブライアンの裁判”である。
この番組でフォークは、初の連続ドラマのレギュラ
ー出演を果たす。
俳優デビューから9年、映像デビューから8年である。
作品はニューヨークの弁護士ダニエル・オブライア
ンが、持ち込まれる事件を奮闘の末解決していくとい
うドラマである。
弁護士・法律ドラマといえば”ペリー・メイスン”であ
る。
辣腕弁護士メイスンが、有能な秘書と調査員と共
に難事件に挑み、明晰な頭脳と行動力で事件を解明
し法廷で勝利を勝ち取る。
弁護士ドラマの王道である。
だが、この”オブライアンの裁判”は一味違っている。
ダニエル・オブライアンは、少しさえない中年弁護士
で、いわゆるスーパーヒーローではない。
事件も離婚した元妻ケティと美人秘書の助言と手助
けがないと解決できないのだ。
ドラマとしてコメディタッチの味付けが施されており、
ミステリー&コメディの弁護士ドラマなのである。
この設定は当時としては画期的であり、一部に熱心
なファンを生むこととなる。
フォークはこの主人公の弁護士ダニエル・オブライア
ン役だった。
主役である。
初レギュラー番組でしかも主役である。
フォークはいつも以上に力を入れて打ち込んだ。
ゲスト俳優には、ジーン・ハックマン、マーチン・シーン、
フェイ・ダナウェイといったフォークと同世代で後のビッグ
スターらが参加している。
ゲスト主役で出演した際に、フォークとダナウェイはに
昔馴染みの間柄だと匂わせるシーンがある。
また、オブライアンを助ける元妻のケティは番組のフ
ァンに強い印象を残しており、後の”刑事コロンボ”で
”うちのかみさん”が姿を現すときには、この時ケティを
演じたジョアンナ・バーンズがかみさん役だろうと思って
いたファンが沢山いたそうである。
二人は本当に昔からの知り合いだったのである。
後年フォークは「”刑事コロンボ”でユニバーサルの巨
大スタジオで潤沢な経費の中での仕事より、
”オブライアンの裁判”の小さなスタジオでもっとこじんま
りとした撮影の方が楽しかった”」と語っている。
フォークにとってのお気に入りのドラマだったこの作品
には、不幸な点があった。
裏番組で”0011/ナポレオン・ソロ”が放送されていた
のだ。
これは強敵である。
「映画はお客に劇場に足を運んでもらわないとならないが、
テレビは家にいたまま見られるのでテレビの方がショー・
ビジネスとしては楽だ」と言われることがある。
だが、映画は同時期に傑作・人気作が公開されていた
としても、時間や日にちをずらせば両方見ることができる。
しかし、テレビは一回に一つの番組しか見ることができな
い。
どれほど優れた番組であっても裏番組に強力な番組が
放送されていれば、どうしようもない。
そのためか、番組は思うように視聴率が取れず、22話ま
でで打ち切りとなった。
テレビ番組としては、残念な終わり方ではあったが、そ
の内容は高く評価され67年に劇場映画化されている。
フォークにとって、この"The Trials of O'Brien オブライ
アンの裁判”はこの時点での代表作であった。
後の”刑事コロンボ”を見た視聴者は「あのオブライアン
弁護士か!」と思ったそうである。
アル・カイオラ演奏の番組テーマ曲が、なか
なか良い。
~続く~