上方漫才の重鎮・喜味こいしさんがお亡くなりな
った。
85歳だった。
こいしさんは、兄の夢路いとしさんと共に子役と
して舞台に立ち始め、戦前に少年漫才コンビを結
成している。
戦後は漫才界の大御所として皆に親しまれた。
訃報を受けてネットでいろいろ調べてみた。
おふたりは、寄席などで決してトリ(最後の演者)
を務めようとはしなかったそうだ。
いとし・こいしほどのキャリア、人気、実力があれ
ばトリは定位置かと思われるが、おふたりは決して
トリはとらなかった。
そう言えば、そうだった。
いとし・こいしが出てトリはやすし・きよしといった
構成が多かったように思う。
その理由としておふたりは、こう考えていたそうだ。
トリには豪快な笑いをとる演者がふさわしく、軽快
な笑いが中心の自分たちはトリにはふさわしくない、
という持論を持っておられた。
加えて、トップであるトリには、それ以上の上が無
く後は下がるだけ、という理由から2番手の位置を好
んでいたそうだ。
これは自分たちを冷静に客観視出来ていたからこそ
そうしていたのだろうか。
本当はトップなのにトップの座に座らない。
これはパフォーマーとしては極めて異例のことである。
おふたりは、その軽妙な笑いの世界の奥に、確固た
る信念をお持ちだったのだ。
それでは、往年の名人芸をどうぞ。