不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

ローカル新聞の見本紙を読んだ。その⑦

 T新聞社の人間から「感想を聞かせてくだ
さい」と言われて私はちょっと嬉しくなった。
 T新聞社は朝刊だけの日刊紙なので空いた
時間に記者達が部数拡販をしているのだろう。
企業規模からしても拡販専門の職員を雇って
いるとは思えないからだ。
 見本紙を配布した翌日にその家に電話して、
新規顧客獲得のセールスをしようということ
だろう。
 そのセールストークの糸口としてまずは紙
面の感想を聞く、という手法なのだろう。
 正攻法と言えば正攻法である。
 だがこれは飛んで火にいる夏の虫である。
 そんな挑発的なことを私に言っても良いの
か?
 もっとも向こうは私がどんな人間か知らな
いからそういうことが言えるのだ。
 知らないということは時に自らを危険に晒
すことになる。

 私はまずこう言った。
「記事の文章が下手ですね。これでは素人並
みですよ」
 そう言われて電話の向こうの女性は、一瞬
黙ってしまった。
 新聞社の人間が文章が下手などとはっきり
言われたことはないかもしれない。
 まずは話の取っ掛かりに感想を聞こうとし
たつもりが、いきなり「文章が下手だ」と言
われたら、面食らうだろう。
 しかも「素人並みだ」とまで言われてしま
ったのだ。
 こんなことを電話を介してとは言え直接言
われるとは、T新聞社の女性も思ってもいな
かったに違いない。
 新聞社なので記事の内容についてのクレー
ムは度々受けているだろう。
 だが文章そのものを批判するとは予想外な
ことだっただろう。

 T新聞の女性の話し方は、その後、急に大
人しいものになってしまった。
 私は時に手加減無しの豪直球を投げつけて
しまうのである。

 ~続く~