開始時刻が来るのを皆で待っていると、公
民館横の駐車場に1台のバンが止まった。
バンの中からは、派手な衣装の男性が降り
てきた。
禰宜の装束に威を正したIさんだ。
Iさんは町内の当班の隣の班にお住まいで、
禰宜さんなのだ。
Iさんは50代まで普通の会社勤めをされ
たおられたのだが、退職後禰宜の道に進まれ
たのだ。
会社員から禰宜への転身は、ちょっと珍し
いことのようにも思えるが、Iさんは家が元
々そういうお宅なのでは自然の成り行きであ
った。
今では各種行事に呼ばれて、禰宜として活
動されている。
そして当然、氏神様の管理、運営にも大き
く関わっている。
禰宜さんの装束は、大相撲の行司の装束に
近いように見えた。
キラキラの生地に、体の線を出さない特有
のデザインの衣装である。
あんなに光っていて、生地は何なのだろう
?
やはり絹なのだろうか?
洗濯はどうするのか?
保管はどうしているのか?
足元を見ると草履ではない。
黒の木靴である。
塗料が塗られたピカピカの黒である。
いまどき木靴を履いているのは、お祭りの
時のオランダ人か禰宜さんくらいのものだろ
う。
駐車場の砂利道をパコパコ音をさせて、こ
ちらにやって来る。
日常見慣れない衣装に見慣れない靴の禰宜
さんの登場で、周囲の空気は一気にお祭りっ
ぽくなってきた。
~続く~