「では、これを」
坊さんは何かを私に差し出した。
のし紙がつけられている。
”寿”表書きが入っている。
風呂敷だ。
ただの粗品レベルではない。
明らかに高級品だ。
これ頂けるのか?
坊さんは笑顔で頷いた。
へぇ~、こんな良いものを頂けるのか。
あぁ、そういうことか。
この寺院では昔から寄付をした人には、こうしたお返し
の品をもらえたようだ。
我が家にもこの寺院の紋章入りの品がいくつかあった
し今もある。
木のしゃもじ、手ぬぐい、夫婦箸等々である。
それらはその時々の何らかの寄付のお返しだったのか。
気が付かなかった。
今回、私は何かが欲しくて寄付したわけではない。
単純に寄付したくて寄付しただけである。
寄付そのものが目的だった。
だが、こういうお返しの品を頂くとちょっと嬉しい。
気分は良い。
(また寄付をしようか)という気になる。
うまいなぁ。
これも経営戦略なのだろうか?
寄付行為が気分を良くし、返礼品で更に良い気分になる。
これでは、寺院サイドの思う壺である(笑)
さすが日本でもトップクラスの参拝客が集う寺院である。
でも、こういうやりとりは嫌いではないなぁ。
私は、その後も楽しい気持ちで参拝し、寺院を後にした。