不二家憩希のブログ

はてなブログに引っ越してきました。

Aさん亡くなる。その⑩

 Aさんには、「薮である」「町内の業務を公然と拒否す
る」という2点に加え、もうひとつの耳目を集める点があ
った。
 Aさんが当地へ医院を開業した時、Aさんには奥さん
がいた。
 その数年後、Aさん夫妻は離婚した。
 それから間もなく再婚をした。
 相手はA医院に勤めている看護師C子さんである。
 これには地域の住民は、少なからず驚いた。
 医師が看護婦に手を出す、と言う話は聞きはするが、
それはテレビドラマや映画の上の話が殆どである。
 それがすぐ近くの医院で起こったのである。
 この時もどう反応してよいのか、わからないといった空
気だった。
 「そんなのよくある話だよ」と鷹揚に構えたくとも、聞い
た話、読んだ話ばかりでこうしたケースに直面した経験
の絶対数が少なすぎる。
 AさんとC子さんとは、年齢差があった。
 30歳以上は離れていた。
 40歳まではいかないだろうが30数年の開きがあった。 
 C子さんは看護学校を出てすぐにA医院で看護師とし
て働き始めた。
 明るく愛想の良い若い看護婦さんとして、常連の患者
からも人気があったそうだ。
 町内のNさんの姑さんらにも「C子ちゃん」と呼んで親
しまれていた。
 そのC子が、ある日から急にA医院の奥様になったの
である。
 「へぇ~、そうなの」と言いつつも、公に口には出さな
い思いがあった。

 ~続く~