ローリング・ストーン誌で故ジェフ・ベックとの最後の共演について、ロッド・スチュワートが語っている。
一部引用する。
「当初から問題だったのは、ジェフをサポートの脇役として起用したことで、いくら報酬が高くても、彼が嫌がることはほぼ確実だった」と、スチュワートは回顧録に綴っている。「ツアーは4カ月間で74日間行われることが決まっていた。舞台裏では、多くの人が『これはもうダメだ、彼は2公演もできないだろう』とつぶやいていた。
2018年、スチュワートはローリングストーン誌の取材で、それでもベックとレコード上で再会する方法を見出したいと語った。「僕の声と彼のギターは天下一品なんだ」と彼は話している。「素敵なことだと思う。一回やってみたんだけど、意見が合わなかったんだ。つまり、エゴのぶつかり合いで、でも、絶対無理ってことはない。月並みな表現だけど、彼がその気になれば、僕だってその気になる。僕らは二人とも(互いを)プロデュースしたいんだ。そこが問題なんだよね」。
翌年、二人はハリウッド・ボウルで一回限りの特別なライブを一緒に行うことを発表した。スチュワートと彼のソロ・バンドによるヒット曲のロング・セットで始まり、ベックがアンコールに登場し、1969年7月以来初めて「Morning Dew」「Rock My Plimsoul」「Blues De Luxe」を演奏した。さらに、「People Get Ready」と 「I Ain’t Superstitious」も復活させた。
引用ここまで
ジェフ・ベックはエゴが強すぎた。
演奏において自分がメインでなければ気がすまなかった。
ロックのみならず、主旋律を演奏する奏者を他の奏者が伴奏をつけるということは常識である。
歌手がいれば歌手を全面に出して、自分は一歩引いてサポートするのは当たり前のことである。
これは、ロックのみならずジャズやポップス、クラシックでも同様である。
歌手が歌えばどんな偉大なピアニストでも伴奏に回る。
フル・オーケストラであっても、伴奏しバックアップする。
これは、音楽におけるお約束である。
だが、ジェフ・ベックにはそれが我慢ならなかった。
歌手と共演するとしても、アルバム参加で1曲のみで多くて2~3曲である。
アルバムに全面参加はなかったと思う。
歌手のライブで共演することは、殆どなく、極稀にアンコール曲に1曲だけだった。
ロッド・スチュアートと共演すれば、レコード会社やライブの主催者は、ロッドを主として押し出す。
スター歌手で圧倒的な人気があるロッドを看板にセールスを構成する。
ベックはサイドに回らざるをえない。
かつてのバンド仲間であっても、それは嫌なのだ。
ロッドとのライブで事前に共演が告知されていても、5曲で共演するだけだった。
それが限界だった。
「自分が主でなければ嫌だ」というのが、ジェフ・ベックだった。
そのエゴの強さがジェフ・ベックをジェフ・ベックたらしめていたのだろう。
こんなギタリストは他にいない。